「よーっす、元就!元気にしてたかあ?元親さんが打ち合わせに来てやったぜー。ん、おい、なんでこいつ死んでんだ?おい、佐助ー」

「貴様…この神聖なる生徒会室に部外者が立ち入るなと言ってあるであろう…」

「何言ってんだ、俺ァ文化祭企画部長なんだぜ?生徒会と綿密な打ち合わせすんのは当然だろーが。ってだからなんでこいつこんな魂抜けてんだよ。おいどうした、なんかあったのか?」

「そやつは今自己嫌悪をしておるのだ、捨て置け。それよりさっさと連絡事項のみを伝えて消えよ」

「相変わらずつんけんしてんなあ、お前。だから友達できねーんだよ。打ち合わせってのはな、互いに意見を交換しあってはじめて成立するもんなんだよ。大体同じ部屋にいてこんなに凹んでるやつ放っておけるかよ。おい、大丈夫かー?気にすんなよ、人生長えんだから、色々あるって」

「………ここ、飲み屋じゃないよ。今そういう誰に対しても当てはまるような慰めの言葉なんか受付られないくらい俺様心狭くなってんの、悪いけど」

「重症だな、こりゃ。あ、元就、一応これ仮の進行表な。あと機材とかの発注もあんだけど、そっちは俺に任せろよ。ツテがあっから、割安で済むかもしんねえんだ。政宗が予算引き上げてくれたけどよ、そのへんどうすんのか話し合えって言われただろ」

「…………チッ」

「いや、舌打ちすんなって。んで話し合うとして、佐助、俺でよかったら相談乗るぜ」

「だからね〜、何度も言うけど、俺はそうそう誰にでもプライベートなことを相談できるわけじゃありません。つかあんたなんかにできるわけないでしょ。竜のダンナとデートなんかしちゃって」

「デート?ああ、この前出かけたことか。あんなのデートじゃねえだろー。さっき言ってた機材を店に確認しに行って、その帰りに腹減ったから近くにあった海の家でヤキソバ買って帰っただけだぜ?なんだお前、もしかしてその事でヤキモチ焼いて凹んでんのか?」

「…………焼いてないと言えば嘘になるけど、それで凹んでるわけじゃないよ。つか、俺様の相談に乗りたかったら、今すぐあんたがダンナの事別に好きじゃないって証明しなさい」

「なんだあ、そりゃ?政宗のことは好きに決まってるだろ。ってお前が言ってるのはそういう意味じゃないのか、もしかして?だったら俺と政宗は親友だから。し、ん、ゆ、う。なあ元就、そうだろ」

「伊達がそう思っているかはともかくな」

「バカ言え、クラスで先生に『この中に親友がいる人ー』って言われたら、俺も政宗も一番に手え挙げてしかもお互いにアイコンタクトするに決まってるだろ。なあ佐助、お前ちょっと疑心暗鬼になってんじゃねーのか?お前と政宗が付き合ってることくらい周りみんな知ってんだから、そうそうお前が心配してるようなことにはなんねえはずだぜ。そんな野暮するやついねえだろ。な?だから元気出せ」

「……ちょっと例えが気持ち悪いよね」

「はあ!?めちゃめちゃわかりやすく俺と政宗の関係を説明してやったんじゃねーか!なあ元就、めちゃくちゃわかりやすかっただろ!?」

「我にいちいち振るな、気持ち悪い…」

「二人して気持ち悪いとか言うんじゃねえ!ったくよお!……ともかく、だからな佐助、別に無理に言えとは言わねえけど、なんか辛いことがあんだったらいつでも俺に言ってみろよ。聞くだけでもしてやっから。な」

「……そりゃどうも。なんか、あんたが『アニキ!』つって慕われる理由わかるよ。かいちょーとはえらい違いだよね。かいちょー酷いんだもん。てか逆にすごいんだもん。どんどん俺を追い落としていくんだもん」

「は?なんだよ、元就になんかされたのか?おい元就!人が嫌がることはしちゃいけませんって幼稚園の時菜々先生に習っただろうが!」

「一体何年前の話をしている…!我は猿飛がどうしてもと言うのでしぶしぶ相談を聞いてやっていたのだ、貴様につべこべ言われる筋合いはない!日輪に焼かれよ!」

「も…元就が佐助の相談に!?嘘だろ!?佐助、そうなのか!?そうなんだな!そうか、元就、お前も成長したなあ…!なんか…なんか俺嬉しいぜ!よかったじゃねーか、相談してくれる友達ができて!」

「だ、黙れ!い…いちいち鬱陶しい男め…!貴様と話していると癇に耐えぬ…!我は帰る!」

「あ、こら、だから打ち合わせ…!…って本当に帰りやがった。ったくよお、いつもああなんだよな、あいつ…」

「え、なんか俺悪い事言っちゃったかな。会長いないと困るでしょ」

「ああ、いーんだよ、後からまた押しかけるから。俺んちあいつんちの隣だから。便利だろ」

「ああそう…?そんならいいんだけど…。……てかつかぬこと聞くんだけどさ、会長って、二人っきりの時はデレデレとか、そういうことないの」

「あー?いや、二人っきりのときもツンツンしてるな。それ今ハヤりのツンデレってやつだろ。…じゃねえよ、お前本当に大丈夫なのかよ」

「大丈夫ではないよねえ…はは。つーかなんだかんだ言って休日はさんでもう5日はダンナと喋ってないし。てか喋ろうと思うとどうも緊張してだめなんだよねえ…。何言っても傷つけてるような気がしてさあ。俺いつからこんなだめになったのかなあ」

「なんだ、いつになく臆病になってるじゃねえか。お前はいつでもヘラヘラしてんのが似合ってんだからよ、早いとこ解決しちまえよ。なんかあったのか、政宗と」

「おお…なんかほんとにきちんと相談してもらってるみたいだ…。あれ、俺人選ミスしてた?あ、誤解しないであげてよね。確かに会長俺を追い込んだ風になってるけど、あれでもきちんと話聞くだけはしてくれたんだよ。会長にしちゃ及第点だと思うから、さっきみたいに怒鳴らないほうがいーよ」

「はは、お前もいい男じゃねえか。わかったよ。俺も早とちりしやすい方だからな、かっとなると考えなしに口に出しちまうんだ。で、なんなんだよ」

「えー…なにから言ったらいいか…。いろいろ端折るんだけど、平たく言えば、どうも俺、竜のダンナを傷つけてるみたいなんだよね。それは確実。でも、それがなんなのかわかんないわけ。わかんないから、何が原因なのかどれもこれも疑っちゃって、さっき言ったみたいなことになってると。そういうことなんだけどさ、元親さんさ、竜のダンナと親友だっつーんなら、なんか心当たりないかな、そういうの」

「………それ、最近の話か?」

「そーだね。結構最近。……どうかした?」

「お前が元就に相談とかしてたのも最近か?」

「………最近だね。え、なに?なんか引っかかるの?」

「政宗とは喋ってねえんだっけ?」

「う、うん。メールは向こうがしてこないし、クラス違うしね…。なんとなく避けちゃって…て、だからなに?なんなの?なに考えてんの?なに頭かかえてんの?」

「いや、俺の勘違いかもしれねえからな…。まあいいか、一応聞いとく。お前さ、相談の内容っつーか、多分不安とか不満とかか?その原因とか理由とか、今言ってた傷つけたかもだのなんだのっていうの、そういうの、一度でもきちんと政宗に直接言ったことあんのか?」

「………………いや、そりゃ……な、いかも?」

「………………俺が勝手に想像するだけだけどよ、じゃあ多分、原因、それ」

「え、や、や、でもね?ダンナに言えってことでしょ?会長もそういうこと言ってたけどさ、だって俺、そういう事言っても……口車に乗せられそうというか、結局解決しなさそうというか……」

「元就も言ってたのか?そりゃ、元就にすらわかる事だってことなんだろ。政宗にしてみたら、お前に勝手に落ち込まれて、悩まれて、挙句の果てに一週間近くもシカトされて、今どんな気持ちでいると思うんだよ。今お前がそうやって、なんで傷つけたんだろうって悩んでる事自体、政宗を傷つけてんじゃねえのか?」

「…………………でも……え、そ、なの、かな」

「俺に聞くな」