「いい加減開けろよー。開けないとドアぶち破るぜー。ってそいつァ冗談だけどよー。なあ元就ー。すねてんのはわかったからよー、機嫌直せよー。せっかく手土産も持ってきてやったんだからよー」

「貴様は十回死ね」

「お、やあっと出てきたか。ほら、土産。お前駅前の和菓子屋でよくこれ買ってただろ?っておいおいおい土産だけ持ってけとは言ってねえ!待てコラ!」

「ドアに足を挟むな!貴様は押し売りか!我の家に貴様を置くスペースなど無い!」

「冷てえこと言うなっつーの!昔はよく一緒に遊んだじゃねーか、ほら、おままごととかよお。俺がお母さんでお前がお父さん」

「黙れ!我がそのような愚鈍な真似をするか!というか貴様もしそれを人前で言ったらいずれ夜道で十回刺されると思え!」

「わあったわあった、言わねーからとりあえずあげろ。な。別に長居するわけじゃねーから。つうかお前が生徒会室からさっさと逃げるから悪いんだろ?何が気に入らないんだか知らねえけどよ」

「わからぬか…?では今から貴様に対する不満を逐一したためたノート十冊見せてくれようか!……なんだ、その目は?何をにやにやしている、気色が悪い…!そういう貴様の人を馬鹿にした態度がまず……」

「そーかそーか、お前はきちんと不満を俺に言えるってわけだな。やっぱ下手に隠されるよりそっちの方がすっきりするよな。つーわけでおじゃまします」

「一体何の話だ…貴様、勝手にあがるな!聞こえているのか!」

「聞こえてるよ。ノート見せてくれるんだろ?俺も見てえ。…ってなんだよそんなに睨むなよ。ああ、佐助の話だって。なんかあいつ自分が思ってる事、本人に直接言えねえみたいだからよ、めんどくせー奴だなって思ってたんだよ。きちんと話せば分かり合えることのほうが多いのにな?誰だって好き好んで争いてえわけじゃあるまいし…。あ、お茶はお構いなく。お茶請けにカステラとかもいらねーから。つうか相変わらず味も素っ気もねえ部屋だな。趣味が見えねえよ、趣味が」

「ケンカ大王が説得力のないことを…!わかりやすい催促をするな!誰が貴様ごときに構うか、帰り道で十回轢かれよ!」

「いや、帰り道徒歩十秒で轢かれるってどんだけ器用なやつなんだよ。そんでまあ、佐助がどうすっかは知らねーけどさ、お前もずっと相談聞いてやってたんなら、うまく問題解決できたらいいな〜とは思うだろ?俺もなんとなく親心ついちまってね。元親さんなだけに。なんつってな!うわ、なんだよ、なんで殴るんだよ!?わかった、つまんねーこと言ったのはわかった!わかったから殴るなって!イテテテテ」

「貴様と話しているとイライラする…!そのようなくだらぬ話をしに来ただけなら帰れ!いや、そもそも話し合いなどくだらぬ、貴様で勝手に決めればよかろう。予算などどこにでもまわせ」

「……?そういうわけにはいかねえだろ、政宗からも話し合うよう言われてるって言ったろ?あ、そうだ、慶次が少しやりてーことがあるからどっかに時間作れないかって言ってきたんだけどよ、進行上いらねえとこあるか?そしたらできるだけまわしてやりてえんだけど。まだ聞いてねえけど、慶次のことだからおもしれえことやるんだろうし。ほら、お前も覚えてるだろ、去年の企画ん時もさ、あいつ……ってだからなんで睨むんだっつうの」

「もういい、黙れ」

「………ほんとお前って何にイライラしてんだかわかんねーくらいいつもイライラしてるよな。ってか俺と話してるときぐらいか、そんだけツンツンしてんの。そういや、佐助が俺に聞いてきたんだよ。元就って二人っきりだとデレデレしねーのかって」

「………マツリ縫いして塞いでやらねば止まらぬのか、その口は」

「……口がむずむずするようなこと言うなよ。まあ聞かれて、当然ツンツンしてるって言っといたけどな。お前知ってる?ツンデレ」

「………それは女に対して使う言葉ではなかったのか」

「さあ、俺も詳しい事はよく知らねーけど。単に照れ屋ってことじゃねーのか?っていうとお前は照れ屋さんって風でもねーから、やっぱ違うわな。ところでよ、元就」

「……黙れと言っている」

「なんで佐助の相談聞いてやったんだ?」

「…何を言うかと思えば」

「なあ、なんで」

「なんでも糞もあるか。奴が勝手にべらべら喋りくさったまでよ」

「じゃあ、やっぱお前が変わったんだな」

「何をぬかす」

「佐助が勝手にべらべら喋りくさったお前にとっちゃなんの益にもならないどーでもいいことをさ、お前はそれでも聞いてやってアドバイスしてやったんだろ。佐助だってお前を信用して喋ってたんだろ。な、元就。そういうの、なんかいいだろ?」

「……奴は生徒会の駒に過ぎぬ」

「ああ。でもお前が駒にしか思ってない佐助は、お前を対等のダチだと思って、喋ってたんだぜ」

「……貴様のそういう顔が我は一番嫌いだ」

「悪いが、親からもらった顔だけは変えられねーわ。なあ、元就」

「………」

「俺、ちゃんとお前のこと好きだからな」

「………貴様の言葉などあてになるものか」

「そーかもな。けど今日佐助の話聞いてきちんと言っとくべきだと思ったんだよ。俺ア別にお前が幼馴染だからとか、生徒会長だからとか、家がお隣さんだとか、そういう肩書きがついてるからお前に構ってるわけでも、こうやって家にあがりこんでるわけでもねーからな」

「黙れ」

「お前がこーゆう不器用な人間だからさ、放っておけねえんだよ」

「………貴様の言葉ほど、あてにならぬものはない…!だから我は貴様が気に食わぬのだ!」

「俺だってお前の考えは気に食わねえよ。だから話し合うんじゃねーか」

「解せぬ」

「なにが」

「貴様に我のなにがわかるというのだ」

「お前こそなんだよその台詞。やっすいB級映画じゃあるまいしよ。自分ばっかとか思うなよ。お前こそ俺のなにがわかるんだよ。そんだけ俺を嫌がってるくせして、なんもわかるわけねーだろ。俺はさ、前みてえにお前と普通に話したいだなんだよ」

「無理だ」

「なんで」

「自分の胸に聞くがいい」

「なんだよ、俺がなんかしたっつーのかよ。不満を書き連ねたノートもいいけどな、それこそきちんと俺に言えよ。ったくよお…これじゃあいつらと同じじゃねーか」

「………昔は貴様とて、我がいなければ何もできぬような馬鹿だったものを」

「ん?」